遅くなりましたが

培養士の山田です。本年もよろしくお願い申し上げます。

成人の日が過ぎ、お祝いムードから日常へと戻るのと共に、以前よりニュースの話題に上がっていた、オミクロン株によるコロナウィルス感染症が日々勢いを増して猛威を振るっているのが聞かれるようになりました。
北海道も今日から再び、まん延防止等重点措置の地区に指定されるかどうかというところまで来ています。
当院は出来る限りの感染対策を行いながら、今後もより良い治療の提供に努めていく所存です。


先日慶應義塾大学病院にて、「亜急性期脊髄損傷に対するiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療」の臨床研究による第1例目のヒトiPS細胞由来神経前駆細胞の細胞移植を行いましたと発表されました。
今回の臨床研究では、安全性を確かめることが主な目的であり、有効性については副次的に評価するそうです。特に移植細胞と移植方法についての安全性を評価するためとしています。

今回の臨床研究と当院の再生医療との違いを以下に簡単にまとめてみました。

臨床研究当院の再生医療当院の再生医療の特徴
細胞の種類iPS細胞由来神経前駆細胞間葉系幹細胞間葉系幹細胞の方が広い範囲に分化が可能。  
細胞の由来他家自家自家は自分由来の細胞なので、拒否反応がほとんどない。
移植方法手術で損傷部位に直接移植点滴で静脈移植点滴の場合、投与時に手術が必要ないので、侵襲性が低く、体への負担が少ない。
移植時期受傷後14~28日培養細胞が用意出来次第治療を受けることが決定してから細胞を増やすので、移植まで一定の時間がかかってしまう。


様々な点での違いがありますが、移植細胞と移植方法についての安全性という観点に絞ってお話をしていきます。


まず移植細胞についてですが、iPS細胞を作成する際、元になる細胞に4つの因子を導入させて培養します。そうすると細胞の初期化という現象が起こりiPS細胞を作成することができます。その際に混ぜる因子の中にガン化に関する因子が含まれており、様々な臓器への分化が可能な能力を有する代わりに腫瘍を形成しやすいという特性がありました。
現在は腫瘍を形成しづらい方法も確立されているようですが、完全に腫瘍を形成しないという証明が難しいため、iPS細胞から目的の細胞への分化を進め、未分化の細胞を取り除いてから移植をするということが大事になってきます。
もし未分化の細胞を移植してしまい、腫瘍を形成してしまった場合、それを排除するための免疫応答が起こり、拒絶反応が起きてしまうという可能性もあります。
なので他家の場合、HLAの適合が高いiPS細胞から目的細胞を樹立させる、ゲノム編集を行うことで免疫反応のリスクが少ないiPS細胞を使用するなど様々な方法が研究されています。
その点、当院で培養している間葉系幹細胞は、患者様ご本人から採ってきた細胞を用いるので免疫拒絶や腫瘍形成などのリスクがほとんどないことなどが違いとして挙げられます。

次に移植方法ですが、この臨床研究で用いられている方法は、全身麻酔を用い損傷部分に直接移植するので、手術における侵襲が高いということが挙げられます。そして今回の治療ではどのくらいの液量や細胞数を移植するのかなどそういった部分の安全面なども確認することが大事な部分になってきています。ですが、損傷部位に直接投与することによってより高い治療効果が得られる可能性があります。
当院の場合(脊髄損傷の治療)は、培養で増やした間葉系幹細胞を点滴を用いて静脈移植するので、侵襲性は低いといえます。

上記以外の大きな違いを言えば、当院は患者様ご自身の細胞を培養する時間が必要なので、投与まで一定の時間(平均6週間程度)を要することです。その点、今回の臨床研究で用いられている細胞は他家になるので、検査などを経て治療が可能となった場合、細胞のストックがあればすぐに手術することが可能です。
ですが今回の臨床試験では、被験者数が少ないことも挙げられますが、それ以上に打つまでの期間が亜急性期(受傷後14~28日)と定められているので、治療を受けられる人が限定的であるということも当院との大きな違いです。
ですが、この臨床試験が順調に進んで、安全性、有効性がともに認められればとても素晴らしい治療法になると思われます。
今回は「亜急性期脊髄損傷に対するiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療」の臨床研究についてのお話をご紹介しました。
当院の再生医療については、他のページで詳しく載せていますので、興味持っていただいた方はそちらの方もぜひご覧ください。宜しくお願い致します。

参照

「亜急性期脊髄損傷に対するiPS細胞由来神経前駆細胞を用いた再生医療」の臨床研究について – プレスリリース(国立研究開発法人日本医療研究開発機構)

https://www.amed.go.jp/news/release_20220114.html

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