バリデーションが無事終了し、培養を再開しました。

スタッフのブログ

お知らせ

当院のCPCで9月より行われておりましたバリデーションが終了し、10月1日から無事培養作業が再開できました。期間中お待ちいただいた患者様には申し訳ありませんでした。

 

こんにちは、培養士の山田です。

季節はすっかり秋の様相と思っていましたが、内陸では雪の予報も出始め、秋を楽しむ前に急ぎ足で駆け抜けていってしまうのかと思うと少し寂しい気がしています。寒さが増すにつれて空気も乾燥しやすくなり、風邪やインフルエンザなども流行りやすくなるのでマスクや手洗いに加えてうがいもしっかり行ってほしいと思います。

話は変わりますが、9月17日に順天堂大学からモデルマウスへのCD73陽性細胞の移植により肺線維化の軽減に成功とのプレスリリースがだされました。

当院でも用いられている間葉系幹細胞というのは

(1)プラスチック培養容器に接着する

(2)CD105, CD73, CD90 を陽性とする

(3)骨、脂肪、軟骨への分化能を有する

という特性を示すことが定義として挙げられています。

その中でも(2)に記載しているCD105CD73CD90とはCDマーカーとも呼ばれるもののひとつで、細胞表面にどのようなタンパク質があるのかを調べることで、どのような細胞であるかを調べるために用いられます。

上記に示した3つのCDマーカーについて、CD105は接着能、CD73は増殖能、CD90は多分化能の大まかな指標としてみることが出来ます。

そして今回の研究で皮下脂肪由来、内蔵脂肪由来、胎盤由来のなかでは皮下脂肪から分離したCD73陽性細胞が他の組織に比べて、細胞表面に発現している間葉系幹細胞マーカー分子の発現量が培養前後で変化しない(細胞の特性が増殖によって変化しにくい)ことを示し、細胞数を増やす操作が不可欠な移植には、皮下脂肪由来のCD73陽性細胞が適していることが明らかになったそうです。

次に、肺線維症モデルマウスの肺の線維化が形成される時期に、皮下脂肪由来CD73陽性細胞を複数回点鼻投与したところ、免疫寛容を誘導し、炎症を抑制して線維化を軽減することに成功したそうです。

今後はさらにCD73陽性細胞がもつ免疫寛容の仕組みを明らかにすることで、ヒト皮下脂肪由来CD73陽性細胞を用いた肺線維症などの難病の新規治療法の開発に繋がることや、新型コロナ肺炎の後遺症として問題になっている肺の線維化改善につながることが期待されています。

 当院の再生医療で使用する幹細胞も皮下脂肪組織由来の幹細胞ということで今回はこのような研究報告について書いてみました。

引用

CD73陽性細胞の移植により肺線維化の軽減に成功

~ 免疫寛容の誘導による肺線維症の新規治療法の開発に期待 ~

https://www.juntendo.ac.jp/news/20200918-01.html