投与された間葉系幹細胞はどのように働く?

こんにちは、再生医療室の杉本です。
当院では脳梗塞や脊髄損傷などを対象とした再生医療を提供しております。患者様ご自身の脂肪組織から間葉系幹細胞(MSC)を取り出し、体外で増やした後にまた体内へ戻してあげるといった治療です。私はその流れの中の体外で MSC を増やす部分を担当する培養士として働いております。今回は MSC を用いた治療において、MSC がどのように働くことで治療効果が期待されるのかということについて簡単に書きたいと思います。

MSC は体内でどうなっている?
  • MSC が分化して損傷した細胞と置き換わる?
    MSC にはいくつかの細胞に分化する能力があります。
    例えば、投与または移植された MSC が損傷した軟骨部分で、軟骨に分化して置き換わることで修復されるのか?
  • MSC の分泌物で治癒・改善を促進する?
    MSC はサイトカインやエクソソームといった分子を分泌します。
    例えば、損傷した軟骨部分でサイトカインを分泌して周りの細胞に働きかけることで軟骨の修復を促進させる?
 文献等を読んでみると、投与された MSC が軟骨細胞などに分化し新しく置き換わって治癒するというよりも、MSC が分泌する分子が患部にある細胞に作用して治癒が促進されるという作用機序ではないかという印象を受けています。ただ、ヒトの体のなかで投与または移植された MSC がどうなっていったのかを確認するのは難しく、これに関する研究もチェックしていこうと思います。
文中に出てくるキーワード

「分化」
国際細胞・遺伝子治療学会(ISCT)では治療に用いる MSC の定義として、

  • プラスチックへの接着性
  • 特異的な表面抗原の発現
  • 多分化能

を挙げています。そして多分化能については、骨芽細胞、軟骨芽細胞、脂肪細胞への分化能を有するものとされています。

「サイトカイン」
サイトカインとは細胞から分泌されるタンパク質で、細胞間相互作用に関与する生理活性物質の総称です。

 
サイトカインとその役割の例
役割
主なサイトカイン
血管新生
VEGF、FGF など
神経細胞の保護
BDNF、NGF など
免疫細胞の抑制
TGF-β、IL-6 など
炎症性因子の産生抑制
MCP-1、IL-1RA など

様々なサイトカインがあり、上記はその一部です。

「エクソソーム」
30~100 nm 程度の脂質二重膜の小胞。その中にはタンパク質や miRNA がその中に含まれており、ある細胞からエクソソームが分泌され、他の細胞に取り込まれることで細胞間でタンパク質や miRNA のやり取りをしている可能性が考えられています。

「miRNA」
マイクロRNA(miRNA)はタンパク質の産生など細胞へ影響を与える分子です。

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