脂肪幹細胞が変形性膝関節症に有効だという話

スタッフのブログ

再生医療室の白水です。

釧路も少しずつ暖かくなり、最低気温は辛うじてプラス(笑)の日が続いています。桜を見られるのはもう少し先のようです。

さて、先週末になりますが京都で行われた脂肪幹細胞研究会に参加してきました。当院では幹細胞のソースとして脂肪組織を使っていますが、脂肪幹細胞をメインとした研究会に参加したのは初めてでした。

最近話題のエクソソームの講演や、動物医療への応用の講演などがありましたが、臨床系の講演として、変形性膝関節症を対象としたお話しがありました。学術論文の例を交えつつ多くの臨床例が示され大変興味深い内容でした。結論としては、まず有害事象の報告はほぼ無く高い安全性が示されていること。これは当院でも同じで既に十数名に治療を行っていますが全く有害事象が無いことと同じです。さらに、最もつらい痛みについての有効性も非常に高いことも示されました。これも当院の実績と酷似しており、当院でもこれまでの全膝について痛みについては消失もしくは軽減されている実績があり非常に納得性が高いと感じました。ただ、現時点ではなぜそのような改善が起きるのかメカニズムについてはまだ分かっておらず今後の研究を待つ必要があるようです。

一つ勉強になったのは、治療法としての脂肪幹細胞治療の位置づけです。現在の標準治療では保存療法で効果が出なくなった重症な方に対しては最終的に人工関節への置換が勧められます。私はいままで人工関節のデメリットをあまり理解していなかったのですが、人工関節にしてしまうとどうしても膝の可動に制限がかかってしまうとのこと。そのため、人工関節に抵抗がある患者さんも多く、そのような方に対して現在提供できる治療法の一つとして脂肪幹細胞を用いた治療は大きな意味があるということをあらためて理解することができました。

当院では、変形性膝関節症に対しては2つの脂肪幹細胞を使った治療を行うことができます。

1)脂肪由来間葉系幹細胞

2)ADRCs

最近の研究では、両者の間で効果に差はほとんどないとも言われています。ご検討される方は以下のような特徴を踏まえて、どちらかを選択されるのが良いと思います。

 

治療法 特徴
1)脂肪由来間葉系幹細胞 ・採取する脂肪は5g程度とわずかです。

・培養に時間がかかります(平均で40日ほど)。

・培養途中で一部をストックとして凍結しますが、2回目以降はストックから培養を開始することで脂肪採取することなくリーズナブルな費用で投与が可能です。

・培養を行うためADRCsよりも費用がかかる。

2)ADRCs ・多くの脂肪組織を採取する必要はあります(約300g)

・脂肪吸引から投与まで数時間で終了しますので、日帰りも可能です。

・腹部の脂肪が吸引できる状態になれば、2回目以降も可能です。

・培養をしない分、間葉系幹細胞より費用が安価。

 

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