病気のはなし – 9

コロナと血圧 

新型コロナウイルス感染症がなかなかおさまりません。当クリニックでも、感染予防のため四苦八苦している状況が続いています。まだまだ、わからないことだらけの新型コロナウイルスですが、血圧とも深い関係がありそうです。

ヒトには、レニン・アンジオテンシン系(RAS)と呼ばれる、血圧を上昇させるための、ホルモンシステムがあるのですが、最近の高血圧の薬はこのRASを抑制することにより、高血圧の患者さんの血圧を下げているのです。さて、RASを構成する成分の一つにアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)と呼ばれる、RASを抑制する働きのある物質があり、肺の細胞の表面にワイングラスのような形でたくさん突き出ています。なんと、新型コロナウイルスはこのACE2にくっついて、細胞の中に入っていき、増殖していくのです。したがってACE2がなければ、ウイルスは細胞の中に入れず増殖もできません。最近の研究で、RASを抑制しておくと、細胞表面のACE2が減少するという報告があり、また、実際、RASを抑制する降圧薬をのんでいる人は新型コロナウイルス感染症にかかっても、重症化しにくかったという報告もでてきました。

今後、RASを抑制する高血圧の薬が、新型コロナウイルス感染症の治療薬として使われる日もくるかもしれません。

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